エネルギー供給の現状と課題 〜災害対応と持続可能な社会のために〜

今も活発な議論を喚起している「令和の米騒動」を発端に、新年早々ロジスティクスの観点から食料安全保障について触れました。

今回はエネルギー関連として、今後更に需要が増す電力と、災害時のロジスティクスに未だ不可欠な化石燃料について触れたいと思います。

1 エネルギーを取り巻く環境の変化
 地球温暖化の進行に伴い、世界各国で「カーボンニュートラル」の実現が急がれています。日本でも、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーの導入が進められています。

 しかし、現状では再生可能エネルギーの安定供給には課題が残り、特に災害発生時には供給が不安定になる懸念があります。さらに、原子力発電の縮小と並行して進められているため、当面の間、石油やガスといった従来型のエネルギーは重要な役割を担い続けると考えられます。

 特に、地方ではガソリンスタンドなどの燃料供給拠点が減少しており、災害時や緊急時の燃料確保が課題となっています。

2  非常時のエネルギー供給の重要性
 異常気象や災害が増加する中で、エネルギー供給の安定確保は重要な課題です。非常時には、避難所や医療機関などの重要施設において発電機が72時間以上稼働できるよう燃料を確保する必要があります。

 しかし、多くの施設が保有する燃料は72時間分が目安であり、災害発生から3日前後で燃料需要が集中することが予想されます。したがって、再生可能エネルギーへの移行が進む過程でも、石油やガスの供給体制を維持・強化することが不可欠です。

3 エネルギー供給強化に向けた提言
 30Advantageでは、持続可能なエネルギー供給体制の実現に向け、次の2つの視点を提案します。

(1)エネルギー確保の多元化
 各自治体が進めるBCP(事業継続計画)や国土強靭化計画を踏まえ、以下の取り組みが重要です。

 ・地域特性に応じた再生可能エネルギーの導入
 ・小規模の電力備蓄体制の整備(バッテリーやEVの活用など)
 ・地産地消型のエネルギーモデルの確立
 これらの取り組みは、地域ごとのエネルギー自給率の向上に貢献し、災害時のリスク分散にもつながります。

(2)燃料供給体制の強化
 災害発生時の「最後の砦」として、石油などの燃料供給体制の強化が欠かせません。以下の対策が効果的です。

 ・給油所や燃料タンクのリアルタイム管理(IoTの活用)
 ・避難所、医療機関など重要施設の燃料確保のための官民連携体制の構築
 ・緊急物資の供給を含めた総合的な物流プラットフォームの整備
 30Advantageでは、これらの取り組みを支援するために、JBSN(ジャパン防災共通分類番号)の導入や、官民が協力する情報共有基盤の構築を提案しています。

4 まとめ
 今後のエネルギー供給体制には、再生可能エネルギーの導入促進と非常時の燃料供給体制の強化が両輪として重要です。30Advantageは、こうした課題解決に向けた情報発信やプラットフォーム整備に尽力し、災害対応力の向上に貢献してまいります。

※エネルギー関連分類番号(NSN)  NSNを適用している各国では、電力関連は61(例 バッテリー:充電式6140、非充電式6135,発電機:6115)、石油燃料関連は91(例 ガソリン:9130,軽油:9140、固形燃料:9110)として登録し、自国のみならずグローバルなロジスティックスに寄与、並びに恩恵(輸出)を受けています。我が国においても、NSN(-30)、JBSNとしてエネルギー分野の国産品(特にバッテリーのデファクトスタンダード化)をNSNに準じた4桁の分類番号を付与して災害対処のみならず、国外市場を視野に入れるべきと考えます。